『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
監督:フィリダ・ロイド
主演:メリル・ストリープ
「鉄の女」と呼ばれたイギリス首相マーガレット・サッチャーの半生を描いた映画です。旧作なので、ネタバレありで感想書きます。
晩年、認知症を患ったマーガレットが過去を振り返るという設定で話が進みます。面白いのが、この振り返り方です。
専門家ではないので詳しくは知りませんが、認知症になると、最近の事をすぐに忘れてしまうだけでなく、現在と過去の区別がつかなくなったり幻覚を見たりするそうです。
この映画では、マーガレットが何年も前に他界した夫デニスの幻覚と会話をします。そして、過去を思い出したところで過去のシーンに移ります。
現在に戻ってきてもマーガレットがひとりで踊っていたりするので、ただ思い出しているだけでなく、認知症の症状で過去と現在を混同しているのだと分かります。
マーガレット目線で描かれるため、認知症の症状でも理解不能の行動を取っているようには見えません。それでも、ところどころで「これは・・・」となるあたりの演出が良かったです。
生い立ちや首相としての嵐のような人生は意外とあっさりと描かれているように感じました。それは物語のメインが晩年のマーガレットを描くことだからだと思います。
マーガレットは夫が死んだことが分からず、幻覚を幻覚だと思っていませんでした。しかし、次第に幻覚であることに気付き、デニスを消そうとします。
そして、たしか8年前から娘に説得され続けていた、デニスの遺品整理を始めます。なぜか深夜に(笑)
遺品を全部袋に詰め込んだところで、デニスの幻覚が家から出て行こうとしますが、靴を履いておらず、マーガレットは思わず呼び止めます。
それでも「心配ない」と言って行ってしまいます。そこで初めてマーガレットが本音を吐露します。
「私はまだひとりぼっちになりたくないの」
そして一筋の涙がこぼれます。デニスは
「君なら大丈夫。これまでもそうだっただろう」
と泣かせる一言。文字で書くと微妙ですけど、映画で観ると感動的なんですよ。
デニスが去ると幻覚も無くなります。でも、いままで家政婦に任せでいたことを自分でやるようになり、ひとりで生きて行く強さを得たことが分かります。
ここまで書いて、ラストをこんなに詳しく書いて良かったのかと不安になっていますが、書いてない部分でも良いシーンが沢山あるので消さないでおきます。
メリル・ストリープの演技は、吹替えで観たのでよくわかりませんでした。でも、晩年のマーガレットと首相時代のマーガレットの動きが全く違うので驚かされます。
この作品でたしかアカデミー賞主演女優賞にノミネートされています。受賞はできませんでしたが。
位 でも、若返らせたり歳を取らせたりするメイクが素晴らしかったです。こういうので、若い頃は若い女優をそのまま使って、歳を取るとその女優にちょっと歳を取らせるメイクをするというのがよくあります。
ところが、これほとんど見た目が変わらないんです。変わるのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー パートⅡ』くらいかも(笑)
『マーガレット・サッチャー』では、メリル・ストリープが最初から歳を取ってるので若返らせることができます。それが、再現できる年齢の幅を広げることを可能にしていると思います。
最後にこの映画を見るときの注意事項です。
観終わったあと、頭の中で「シャールウィーダーンス」と音楽が鳴りやまなくなります。
以上、感想でした。これを読んで少しでも映画に興味を持っていただけたら嬉しいです。
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