2016年6月30日木曜日

『her 世界でひとつの彼女』ネタバレあり



監督:スパイク・ジョーンズ
出演:ホアキン・フェニックス、スカーレット・ヨハンソン


人工知能との恋を描く近未来ラブロマンス。これは名作。



あらすじ

近未来のロサンゼルス。セオドア・トゥオンブリーは妻と別居し離婚を迫られ、悶々とした日々を送っていた。
手紙の代筆ライターの仕事も以前のように楽しめず、性格もすっかり暗くなってしまっていた。

ある日、「OS1」という人工知能のオペレーティング・システムのサービスが始まったことを知り、早速パソコンにインストールする。
そして、いくつか簡単な質問に答えると、サービスが開始された。

彼女の名はサマンサ。
最初はただのプログラムだと思って会話していたが、あまりにもリアルな感情を持つ人間らしいサマンサに、徐々に惹かれていく。



見どころ

映画の始めの方に、セオドアが自宅でゲームをしているシーンがあります。
キャラクターが急な坂を必死に登るが、結局転げ落ちてしまう。

このシーンが、この映画のすべてを物語っているように思います。ぜひ注目して、どんな意味なのか考えながら観てみてください。



感想

これからこの映画を観る人にアドバイス。
少なくとも前半はひとりで観ましょう。家族で観ると気まずい空気になります。
なぜかというと、セオドアが電話越しに女性と通話しながら自慰行為を行うからです。そして声がデカい・・・。
このシーン自体本当に必要なのかは分かりませんが、今後の展開を考えてあったほうがいいとは思います。でも、あのシーンで誰が得をするのか・・・。



さて、この映画は男性とAIの恋愛を描く物語であり、ふたりの関係には恋愛のあらゆる要素が組み込まれています。まさに驚きです。
身体がなくてもここまで恋できる。「人は見た目じゃない」の一種の究極とも取れます。



サマンサ演じるスカーレット・ヨハンソンの演技が素晴らしいです。
声だけの出演ですが、見事にサマンサに命を吹き込んでいます。
同時にあのハスキーな声がセクシーです。実は今まで、あんまりスカヨハは好きではなかったんですが、これは恋せざるを得ないくらい素晴らしかった。

セオドア役のホアキン・フェニックスも素晴らしい。
体を持たない相手との恋ですが、彼の演技のおかげで説得力が生まれました。
セオドアが大根演技してたら、ただのキモオタになり下がってしまうので、ホアキン・フェニックスは偉い。

というのも、別居中の妻と会って離婚届にサインをするシーンがありますが、そこでOSと交際していると言った瞬間に妻の顔が変わります。
そして変人扱い。
ホアキン・フェニックスの演技に説得力があるからこそ、ショッキングなシーンになり、セオドアに感情移入ができます。


でも、こういうシチュエーションって結構身近に存在すると思いませんか?
アニメやゲームの2次元のキャラクターに恋してる人は割といます。程度の差こそあれ、あなたの周りにもきっといます。
『her』を観て気づいたことは、そんな2次元のキャラに恋する人を馬鹿にできないなということです。


あと、もうひとつ。
OSとの恋は、セオドアの職場まわりではそこまで変なことのように言われません。むしろ同じような人もいます。
こういう、同質な人が集まる場をエコーチェンバーと言います。
エコーチェンバーの中での常識が、その他の場では非常識ということがよくあって、トラブルの元になったりもします。注意してくださいね。
今回はそのせいでセオドアと妻が突然喧嘩することになってしまいました。

ちなみに、私のTwitterのTLは、がっつりエコーチェンバーです。



あと、さらにもうひとつ。
この映画の主題歌にもなっている、カレン Oの「The Moon Song」。
劇中にも登場しますが、エンド・クレジットで流れたときに思わず泣いてしまいました。
映画で泣いたのは『スター・ウォーズ』以外では初めてです。
是非、エンド・クレジットまで楽しんでください。

2016年6月27日月曜日

『ボディ・スナッチャー 恐怖の街』ネタバレあり



監督:ドン・シーゲル
出演:ケヴィン・マッカーシー
1956年公開


テレビの検索機能を使って映画を録画しまくると、こういう面白い映画に出会えます。



あらすじ

マイルズ・ベネルはある街の開業医で、みんなに信頼される医者だ。
学会に出席するために街を離れていたが、2週間ぶりに帰ってきた。
看護師によると、この2週間の間、「ベネル先生じゃないとダメだ」と言って大勢の患者が待っていたそうだが、いざマイルズが帰ってくると待合室には誰もいない。
街に出て待っていたはずの患者に体調を尋ねると、皆「もう良くなった」と答える。

なんとなく違和感を覚えるマイルズだったが、彼の注意を惹いたのはベッキー・ドリスコルとの恋愛だった。

しかし、同時に何人もの人が「あの人は偽物だ」「何から何までそっくりだが、感情がない別人だ」と言い出す。
そして、次の日には何事もなかったかのように生活している。

さすがにおかしいと感じたマイルズは調査を始める。



見どころ

文字通り「街中の人が敵」になるところが凄いです。しかも眠ったら別人と入れ替わってしまうという難易度の高い設定も怖ろしい。
とにかく、クライマックスはヤバいです。



感想

まさかこんなに面白いとは思いませんでした。
こうして人はホラーというジャンルにハマっていくんですね(笑)


前半の、何かがおかしいぞ?という雰囲気作りが上手かったです。
水面下で何かが起きているのに、マイルズがずっとベッキーを追いかけてるあたりもちょっと笑える(笑)

身元不明の身体が発見されたときから、急激にストーリーが動きます。

どうして眠ると体が偽物と入れ替わって、本来の体が消滅するのかまったく分からない上に、入れ替わる瞬間の描き方がテキトー極まることだけが難点でした。
どういうメカニズムなのかはっきりさせたい・・・。

2016年6月26日日曜日

『アウトロー』ネタバレなし



監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ロザムンド・パイク


続編『Jack Reacher : Never Go Back』が製作中です。


あらすじ

ペンシルベニア州ピッツバーグ。PNCパークの近くにいる人々を、対岸の立体駐車場からスナイパーライフルで次々と射殺する事件が発生した。
6発で5人が死亡。現場に残された薬莢と駐車場で使われたコインの指紋が証拠となり、元陸軍スナイパーであるジェームズ・バーが逮捕された。

バーはエマーソン刑事と地方検事のアレックス・ロディンによる取り調べに何も答えず、紙にこう書いただけだった。

「ジャック・リーチャ―を呼べ」


ジャック・リーチャー。海兵隊や憲兵隊捜査官と人生の大半をアメリカ軍に捧げてきたが、突然退役。流れ者となり、今はどこにいるか誰も知らず、手掛かりもない。
見つけられず途方に暮れるエマーソンたちだが、そこにジャック・リーチャーのほうから姿を見せる。



見どころ

CG、スタントなしのアクションも必見です。

でも、私はトム・クルーズ演じるジャック・リーチャーの型破りな行動に着目してほしいと思っています。
まず現れ方からして型破りですが、最後までそういう行動が続きます。

こういう所がこの作品の良いところだと思います。



感想

原作小説がハードボイルドだそうで、渋い雰囲気の映画です。
『ミッション・インポッシブル』みたいなのを期待すると裏切られますが、冷静に観るとかなり面白いです。

ジャックの鋭い洞察力と、常識に捕らわれない捜査で少しづつ陰謀に近づきます。その過程が良いんです。観ればわかります。良いんです。

批評家の評価は割れたようで人を選ぶ映画のようですが、私は大好きでした。

2016年6月24日金曜日

『スノーホワイト』ネタバレなし



監督:ルパート・サンダース
出演:クリステン・スチュワート、シャーリーズ・セロン
2012年公開


大胆に脚色し、アクション満載のダーク・ファンタジーに生まれ変わった白雪姫です。



あらすじ

スノーホワイトの母であり王妃であるエレノアが急逝。さらに正体不明の闇の軍隊が攻め寄せてくる。マグナス王は兵を率いて闇の軍隊を撃退。捕虜となっていた美女ラヴェンナを助ける。
ラヴェンナの美しさに心を奪われたマグナス王は、彼女を新たな王妃として迎え入れる。

しかし、ラヴェンナの正体は魔女であり、スノーホワイト以外の王族を皆殺しにして王国を乗っ取ってしまう。


時が経ち、スノーホワイトは牢の中で美しい女性に成長していた。
ある時、ラヴェンナが魔法の鏡にこの世で最も美しい人物を尋ねると、鏡はこう答えた。
「それはあなたです。しかし、それも今日までのこと。スノーホワイトはあなたよりも美しくなりました。」
自分よりも美しい者が現れると魔力が消え、永遠の若さも手に入らなくなる。
ラヴェンナは弟にスノーホワイトを連れて来るよう命じる。彼女を殺し、永遠の美と若さを手に入れるために。



見どころ

クリス・ヘムズワース演じる猟師エリックに注目!
ラヴェンナとスノーホワイト、どっちの味方につくのか。また、スノーホワイトに思いを寄せる幼馴染ウィリアム王子との三角関係”みたい”な所にも注目です。



感想

同時期に『白雪姫と鏡の女王』が公開されたので、軽く比べてみます。
『鏡の女王』はコメディタッチで、ジュリア・ロバーツ演じる魔女は頭がイッちゃってる感じです。アクションもありますが、激しいものではありません。

『スノーホワイト』は、ダークです。シャーリーズ・セロン演じる魔女は狂っていると言うのが適切でしょうか。怖いです。アクションは激しく、もはや戦争です。


『スノーホワイト』に登場する妖精たちの住む聖域はとても幻想的で美しいです。
ところが、妖精のビジュアルが『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムみたいでどん引きしました(笑)

面白かったので続編が楽しみですが、そろそろ映画館での上映が終わる頃かな?

2016年6月22日水曜日

『ヒトラー ~最期の12日間~』ネタバレなし



監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演:ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ララ

『帰ってきたヒトラー』の予習を兼ねて鑑賞しました。


あらすじ

1942年。ミュンヘン出身のトラウドゥル・ユンゲは、ヒトラーの秘書として採用される。

1945年4月。ベルリンにソ連軍が迫っていた。遂に市街地にまで砲撃が始まる。
ヒトラーとユンゲたちは地下要塞に入るが、ヒトラーは頑としてベルリンから逃げようとしなかった。
ユンゲはヒトラーに退避を勧められるが、自分まで総統を見捨てることはできないと言って要塞に残る。

ドイツ軍がソ連軍を追い返してくれると信じるヒトラーだが、将校たちはもはや攻撃能力など残っていないと分かっていた。

そして、ベルリン市街戦が始まる。



見どころ

ヒトラーの愛人エヴァ・ブラウンの狂気じみた行動に震えます。
ソ連の砲撃の中に行われたヒトラーの誕生パーティーで踊り狂ったり、ユンゲにとてもとても幸せだと語ったり・・・。
終わりが近づいていることが分かっていて、やけになっているのか、本当に狂っているのか・・・。



感想

何もかもが異常な戦争が描かれます。
地下要塞の様子はヒトラーの秘書ユンゲの視点から語られます。
市民の様子と戦争の悲惨さは、ドイツのために戦うと友だちと共に武器を取った少年ペーターから語られます。

このふたりの登場人物に注目して観ると、映画の伝えたいことが分かりやすいと思います。


歴史の悪者ヒトラーをしっかりと描いているので、彼がどのような人物で、どんな夢を抱いていたか、よく分かります。
ヒトラーのイメージが変わりました。

2016年6月21日火曜日

『10 クローバーフィールド・レーン』ネタバレなし

監督:ダン・トラクテンバーグ
主演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド


J・J・エイブラムスが製作を務めた今作は、モンスター映画『クローバーフィールド HAKAISHA』とDNAレベルで繋がっています。
わかりやすく言うと、同じ精神を持つ映画だがストーリーは繋がっていない。


あらすじ

ミシェルはベン(たぶん夫)との言い争いがきっかけで、家を出てしまう。しかし、途中で交通事故に遭い、目が覚めるとコンクリートの壁の部屋に手錠でつながれ、点滴を打たれていた。
やがてハワードという男が現れ、拘束を解き、状況を説明する。「敵の攻撃を受け、外の世界はすべて汚染されている。事故に遭ったミシェルを見つけ、捨てて置けずに助けた」

そして、ハワードとエメットという若者の3人で共同生活をすることになる。

しかし、ハワードに疑念を抱いたミシェルはシェルターの外に脱出しようとする。



見どころ

何といっても、いい感じにエロいミシェルが良いです(笑)
タンクトップが素晴らしい。


真面目なほうの見どころは、ハワードです。
支配欲の強い人物だと言うことは初登場シーンですぐに分かりますが、優しい一面を見せることもあります。
ただ単に怖い人なのか悪い人なのか判断がつかず、彼の言動でストーリーが動くこともあります。
一挙一動に注目して観てください!



感想

映画のほとんどがシェルターの中の様子です。そこは期待外れでした。もっとモンスターが出てくるものだとばかり思っていました。
ところがどっこい、シェルターの中3人で展開されるストーリーに完全に飲みこまれていました。
やっぱり怪しいハワードのおかげです。

特にクライマックスは良かったです。なかなかエグいことになってました。
ここばかりは何を言ってもネタバレになるので言えません!



予習は必要?

『クローバーフィールド HAKAISHA』を観ていなくても楽しめます。
私はPOV(1人称視点)で手ぶれの多い映像に酔って気持ち悪くなったので、観たくても観れません(笑)
映画自体はとても面白いので、酔わない自信のある方は挑戦してください。

予告編は観ない方がいいです。CMでも流れてるから回避は難しいですが。

2016年6月20日月曜日

『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1』ネタバレなし



監督:デイビッド・イェーツ
主演:ダニエル・ラドクリフ

小学生の頃から大好きで、本も映画も制覇しました。映画好きになるきっかけにもなった思い出深いシリーズです。
いつの間にか『スター・ウォーズ』のほうにハマりましたが。

あらすじ

新学期が始まる直前、ダーズリー家に不死鳥の騎士団が集まる。ハリーを隠れ穴まで護衛するためだ。
しかし、死喰い人(デス・イーター)の待ち伏せに遭う。なんとか危機を脱して隠れ穴にたどり着くも、犠牲は大きかった。

自分のためにこれ以上犠牲者を出したくないと考えたハリーは、ロンとハーマイオニーと3人だけで、ヴォルデモートの分霊箱を探す旅に出る。

しかし、なかなか見つからず、破壊する方法さえわからない。ダンブルドアの遺言とはいえ、残されたヒントは中途半端だった。

その間にもヴォルデモートと死喰い人は勢力を伸ばし、魔法省まで支配下に置いてしまった。


感想

原作を読んだのが何年も前の事なので、映画化した際の変更点などはさっぱりわからないのが残念なところです。


さて、冒頭のハーマイオニーのシーンは秀逸でした。
何も知らない両親から自分の記憶を消し、自分が存在した痕跡すら消し去ってしまいます。
短いですが、分霊箱を探す旅がどれほど危険かわかるとともに、ハーマイオニーの固い決意を感じることができる悲壮なシーンです。


ストーリーとは関係ないですが、ハリーたちが通る雪の積もったディーンの森。そこは『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のロケ地でもあります。スターキラー基地の地表です!
ライトセーバーバトルはセットですが、『死の秘宝』を観ていると、今にもカイロ・レンが現れそうでワクワクしてしまいます!
こういう変なところで喜ぶから、横にいる父に白い目で見られるのです(笑)

ディーンの森に入るには1000円ほどの入場料が必要みたいです。いつか行きたいですね。

2016年6月19日日曜日

『ハンナ』ネタバレあり



監督:ジョー・ライト
主演:シアーシャ・ローナン
2011年公開


悪役にケイト・ブランシェットを迎えたアクション映画。
シアーシャ・ローナンと言えばスター・ウォーズのオーディションを受けたことを公表して落とされた印象が大きいです(笑)


あらすじ

16歳のハンナは父のエリックとふたりきりで、フィンランドの森林に住んでいた。完全に自給自足で、ハンナは父から様々な言語や戦闘技術を学んでいた。

ある日、ハンナはエリックに「外の世界に出たい」と訴える。
エリックはある装置を取り出し「スイッチを入れれば外の世界に行けるが後戻りはできない」と告げる。
ハンナは父が狩りに出た間にスイッチを入れる。

狩りから戻り、作動している装置に気付いたエリックはスーツに着替え、ハンナに合流地点を教えてからひとりで出て行った。

間もなく、装置から出た信号に気づいたマリッサ・ウィーグラーはCIAの部隊を派遣する。
部隊はハンナのいる小屋を包囲し、突入する・・・。


感想

『レオン』に次ぐ傑作だと思います。
アクションもしっかりしているし、世間を全く知らないハンナの友情などを丁寧に描いているところも良いです。

画の構図もよく考えられていて、美しくかつ様々な意味が表象されていました。


ここからネタバレ注意

この映画は、冒頭とラストのシーンが対になっています。
冒頭はこうです。
ハンナは矢で鹿を射抜きます。命中するも鹿は走って逃げます。しかし、力尽き倒れたところにハンナが近づき「心臓を外しちゃった」と言って1発ぶち込みます。

一方ラストはこうです。
銃を持つマリッサを矢で射抜きます。同時にマリッサもハンナを撃ちます。ふたりとも傷を負いますが、逃げるマリッサをハンナが追います。
足を滑らせて倒れたマリッサにハンナが近づき「心臓を外しちゃった」と言って、マリッサの銃で彼女を撃ち殺します。

ほとんど同じ展開ですが、ここでハンナの成長を描いています。
ハンナが矢を射り、マリッサが発砲するラストシーン。マリッサは狼の口のトンネルから現れます(古いテーマパークのような所なのでこういうのがある)。
つまり、マリッサは冒頭の鹿のように狩られる者ではなく、狼のように狩る側なのです。
そのマリッサを殺すことができた。

ハンナは強く成長したのです。
ここで映画は終わるので、ハンナがマリッサを食べたかどうかはわかりません(笑)
いや、食べるわけないんですけどね。

2016年6月18日土曜日

『大統領の陰謀』ネタバレなし



監督:アラン・J・パクラ
主演:ロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマン
1976年公開


あらすじ

1972年6月17日。ワシントンD.C.の民主党のオフィスがあるウォーターゲートビルに不法侵入したとして、5人の男が逮捕された。
裁判の傍聴席に共和党の弁護士がおり、容疑者が多額の現金を所持していた上に無線機やカメラなどを持っていたこと、さらにひとりがCIA関係者であると供述したことから、ワシントン・ポスト紙の新米記者ボブ・ウッドワードは踏み込んだ取材を始める。

ウッドワードがワシントン・ポストのオフィスに戻って記事を書いていると、先輩記者のカール・バーンスタインが記事を書き直していた。ウッドワードは腹を立てるも、バーンスタインのほうが優れていた。そして、ふたりは一緒に取材を行うことになる。

取材は難航するが、謎に包まれた情報提供者”ディープ・スロート”の助けもあり、徐々に真相に迫っていく。


感想

ウォーターゲート事件という実際にあった事件が題材になっています。

それにしても難しい。
登場する名前が多い上に、全然知らない人ばかり。映画そのものに起伏が無く、盛り上がらない。

観る前にウォーターゲート事件について予習した方が良いと思います。実際に起きた出来事なのでネタバレと言えるのかどうか・・・。


ウォーターゲート事件

1972年6月17日。ウォーターゲートビルで、民主党全国委員会本部に盗聴器を仕掛けていた男5人が現行犯逮捕された。
以下が、逮捕された5人。

バーナード・バーカー:元CIA工作員で亡命キューバ人を訓練していた
ジェームズ・マーチン(本名ジェームズ・W・マッコード・ジュニア):ニクソン大統領再選員会の警備主任の元CIA工作員
バージリオ・ゴンザレス:退役軍人
ユージニオ・マルチネス:退役軍人
フランク・スタージス:退役軍人

押収された手帳の中に、ホワイトハウス顧問のチャールズ・コルソンの名前、エヴェレット・ハワード・ハントの名とホワイトハウスでの電話番号があった。
ハントはFBI、CIA、ホワイトハウス非常勤顧問を務め、4月からホワイトハウスの向かいの広告会社に勤務していた。さらに、CIA時代にキューバに関わっており、逮捕された5人と関係があると考えられた。
さらに、5人が泊ったホテルから53枚の100ドル紙幣(約160万円)が発見された。

6月19日。ニクソン大統領の報道担当官ロナルド・ジークラーは、ホワイトハウスは事件と無関係だと一蹴し、22日にはニクソン大統領も同様の発言をしている。

6月30日。ワシントン連邦地方裁判所で大陪審が始まった。しかし、被告人は侵入を認めるも、金の出どころや依頼主は明かさなかった。
しかし、弁護士が「ハント氏ともうひとりの人物から弁護を依頼されている」と発言した。弁護士は追求されるも「もうひとりの人物」が誰かを明かさなかった。

バーナード・バーカーの事務所の通話記録から、事件当日に12回も大統領再選委員会財政顧問ジョージ・ゴードン・リディと通話していることが明らかとなった。
そして「もうひとりの人物」がリディであると確認されたため、彼も逮捕された。
その後、行方をくらませていたハントも遂に出頭し逮捕された。

1973年1月8日。大陪審の結果、マッコードとリディ以外は有罪を認めた。しかし、事件の背後については明かさなかった。
その後、マッコードが裏を明かすようになり、3月24日の上院特別調査委員会で「盗聴計画は、ジョン・N・ミッチェル(大統領再選委員会委員長)、ジョン・ディーン(大統領法律顧問)、ジェブ・スチュアート・マクルーダー(大統領再選委員会副委員長)の3名が事前に承認を与えた」と暴露した。

判決は、リディに懲役20年、ハントに懲役25年、他の被告人には懲役35年が言い渡された。


6月19日に夕方。大統領再選委員会委員長のジョン・N・ミッチェル、副委員長のジェブ・スチュアート・マクルーダー、委員会メンバーのフレデリック・ラルー、ロバート・マーディアン、大統領法律顧問のジョン・ディーンの5人が集まり、最初のもみ消しのための会合が行われた。
その後、リディとハントを中心に次々と証拠物件が処分されていった。


マッコードの暴露により、今まで行政特権でスタッフの証言を拒否してきたホワイトハウスにも非難が集まり、大統領はホワイトハウス内部の調査を始める。
4月17日。大統領は「調査に新たな進展があり、事件捜査に全面的に協力して、いかなるもみ消し工作も強く非難する」と語った。

その後、ニューヨーク・タイムズ紙に会合のことやディーンが口止め料を支払ったことなどがスクープされると、ディーンは大統領法律顧問を解雇される。その後の上院特別調査委員会でディーンは「ニクソン大統領はもみ消し工作を知っていた」と証言した。


1973年7月13日。上院特別調査委員会でバターフィールド大統領副補佐官が、大統領執務室の会話を録音したテープが存在すると発言した。
テープの提出を求められたニクソン大統領はそれを拒否。

10月20日土曜日。テープの提出命令を無効にするようリチャードソン司法長官経由でアーチボルト・コックス特別検察官に命じるも、コックスは拒否。
次に、リチャードソンにコックス解任を命令するが、リチャードソンは拒否し、辞任。さらに同じ命令をラッケルズハウス司法副長官に出すが、彼も抗議辞任する。最終的に、ボーグ訴務長官がコックスを解任した。
この「土曜日の夜の虐殺」に全米から非難が殺到。大統領弾劾の動きが始まる。


ウォーターゲート事件以外での汚職も判明し、ニクソン政権の支持率は68%から30%以下にまで落ち込んだ。世論も弾劾賛成派が多数となり、ニクソンは窮地に立たされた。
1974年8月5日に、すべての録音テープが提出された。
これが決定的証拠となり、もはや弾劾は避けられない展開となった。

1974年8月9日正午。ニクソン大統領はアメリカ史上初めて任期中に辞任した大統領となった。


以上がウォーターゲート事件です。ほとんどウィキペディアの要約ですが。

2016年6月16日木曜日

『ローマの休日』ネタバレなし



監督:ウィリアム・ワイラー
主演:オードリー・ヘプバーン、グレゴリー・ペック
1953年公開

おそらくほとんどの人は名前を知ってるだけで観たことないんじゃないでしょうか?
私もようやく観ました。ホントに名作でした。


あらすじ

ヨーロッパ屈指の歴史を持つ某国のアン王女がヨーロッパ各地を表敬訪問している。最後の訪問地はローマだ。
しかし、過密なスケジュールに耐えられなくなり、ある夜アン王女は宮殿を抜け出して街に出てしまう。

しばらく歩きまわっていたが、睡眠薬を打たれていたせいでベンチで眠ってしまう。
そこに、記者のジョー・ブラッドリーが偶然通りがかり、家まで送ろうとする。しかし、アンは睡眠薬のせいで朦朧としていたため、しかたなく自宅に運び込む。

翌朝、ジョーはアンの正体を知り、独占記事を書こうと画策する。
一方でアン王女は身分を隠し、アーニャと名乗ってローマ観光を始める。そこにジョーが偶然を装って合流し、突然の休日を楽しむ。

王女が行方不明になり、某国関係者は「王女は急病」と発表。同時に情報部に王女の捜索を命じる。


感想

さすが名作と呼ばれるだけあって面白い。さらに、オードリー・ヘプバーンはどのカットでも美しい。無邪気にローマを楽しむ姿に癒されない人はいないでしょう。
あと、びっくりするほどウエストが細い。


アンは頑なに本当の身分を明かしませんが、いずれは王女に戻らなければいけないし、ジョーにお別れを言わなければならない、ということをちゃんと分かっています。でもずっとこのまま自由でいたいと葛藤します。
一方で、ジョーはアンと仲良くしながらも、それを裏切る形で記事にすることに良心の呵責を感じ始めます。
このふたりの微妙な感情の機微が映画に深みを与えているように感じました。
これをどこかの国の映画みたいにセリフで言わないところが良いです。演技だけで語りきります。


ラストの記者会見のシーンがこれ以上ないほど素晴らしいです。ドキドキすると同時に切ない!
ひとりでも多くの人に観て欲しい名作でした。

 

2016年6月15日水曜日

『ジャッカル』ネタバレなし



監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ
主演:ブルース・ウィリス、リチャード・ギア
1997年公開


ブルース・ウィリス vs リチャード・ギア、直接対決!!


あらすじ

チェチェン・マフィアのボスの弟がFBIとロシア情報部の合同捜査チームに殺害される。その報復として、ジャッカル(ブルース・ウィリス)にアメリカの要人の暗殺が依頼される。

ジャッカルが存在する証拠すらつかめていないFBIは、服役中の元IRA、デクラン・マルクイーンと取引して捜査に協力させる。

FBIはデクランの助けを得て着実にジャッカルに迫るが、ジャッカルは巧みに捜査をかわし暗殺の準備を整えていく。



感想

かなり面白いです。オススメです。期待していた訳ではありませんが、気づいたら画面を食い入るように観ていました。


ブルース・ウィリスが特に良かったです。なんとあのブルース・ウィリスの様々な髪型を楽しむことができます。
捜査の目をかいくぐるための変装ですが、いろんな髪型のブルースを観ているうちに動物園にでも来たかのようなワクワクを感じられました。いちいち変装が似合ってるところも素晴らしいです。
ちなみに、リチャード・ギアはそのまんまリチャード・ギアでした。


クライマックスは最高の一言に尽きます。誰が標的か、どこから殺すか、どうやって阻止するか。すべてが一気に進みます。ここまでくると髪型どころではなくなります。

勝負の決着はあなたの目で確かめてください。

2016年6月14日火曜日

『海底2万マイル』ネタバレあり



監督:リチャード・フライシャー
主演:カーク・ダグラス
1954年公開

ディズニーシーにもアトラクションのある映画です。


あらすじ

19世紀後半。海の怪物に襲われ、船が次々と沈没する事件が発生した。アメリカ海軍は怪物捜索のため軍艦を派遣。アロナクス教授にも同行することを要請する。
しかし、軍艦は攻撃を受け沈没。

辛うじて生き残ったアロナクス教授と助手のコンセイユは、偶然にも潜水艦ノーチラス号を発見する。そこに同じく生存者の銛打ち、ネッド・ランドも流れ着き、3人で中に入る。
ところが、乗組員に見つかり捕らわれてしまう。


感想

ディズニーシーのアトラクションでノーチラス号に見覚えがあったので、親しみやすい映画でした。


ネモ艦長、アロナクス教授、ネッド・ランドそれぞれの意見は一理あると言った感じで、特定の誰かに感情移入するといったことはできませんでした。
ネモ艦長は過去の経験から心が少し歪んでいます。それを知りながら艦長に共感していく教授の姿はちょっと不気味でした。
同時に、ネモ艦長が命がけで守ろうとした技術(原子力?)を世のためになるとして広めようと言い出したあたりも不気味でした。


この作品には「科学者の責任」というテーマがあるように思います。
ネモ艦長は、彼のみが知る「人類を救うことも、また滅ぼすこともできる技術」が人々の役に立つときが来ると希望を抱いていました。その希望をアロナクス教授に託そうとまでしました。
しかし、その技術がもたらした大爆発を目にした教授は、この技術が失われて良かったのかもしれないと言っています。

この技術を持ち帰っていたら、アロナクス教授はオッペンハイマーになっていたかもしれないのです。

この映画は、アロナクス教授が科学者の責任をネモ艦長から学ぶ物語でもあるのです。


ちなみに、カーク・ダグラスはマイケル・ダグラスの父親で、今年の12月9日が100歳の誕生日です。

2016年6月13日月曜日

『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』ネタバレなし



監督:スティーブン・スピルバーグ
製作総指揮:ジョージ・ルーカス、キャスリーン・ケネディ
2008年公開


シリーズ4作目。19年の時を経ての続編でした。


あらすじ

1957年。イリーナ・スパルコ率いるソ連軍が、アメリカ軍の保管庫に侵入。捕らえたインディにロズウェル事件のエイリアンの遺体を探させる。
相棒のジョージ・マクヘイルに裏切られながらも、なんとか脱出。民家に身を隠す。

しかし、インディはすぐに異変に気がついた。そこにいるのは人間ではなくマネキン。逃げ込んだのは住宅街ではなく、核爆弾の実験場だったのだ。そして、間もなく実験が始まることを知らせるサイレンが鳴り響く・・・

なんとか危機を脱したインディだが、ジョージがソ連側についたせいでFBIにマークされてしまう。さらに大学から無期限の停職処分を受けてしまう。
そんなとき、バイクに乗った若者がインディに助けを求める。


感想

インディらしさがしっかりと受け継がれていました。ユーモラスなアクションが心地良いです。
しかし、核爆弾の実験といいクリスタル・スカルのオチといい、やりすぎ感は否めません(悪い意味で、さすがルーカス)。これはかなり大きなやっちまった案件です。


冒頭、軍の車両と並走し、競争しようと呼びかける若者たちが現れるシーンがあります。
このシーンはルーカス監督の青春映画『アメリカン・グラフィティ』を思い起こさせます。
イカした車に乗った若い男女がノリの良い音楽をかけてスリルとスピードを追い求める。60年代アメリカの青春です。その話はまた今度。


スピルバーグとよく組んでたイメージのあるシャイア・ラブーフがマット・ウィリアムズ役です。『トランスフォーマー』や『イーグル・アイ』なんかでよく見かけたんですが、最近は「JUST DO IT!」とひたすら叫ぶ動画以降姿を見ていません。元気かな?
そんな彼が今作のインディの相棒です。変なとこでカッとなるところ以外は文句なしです。ナイフもまあまあカッコいい。


ヒロインは1作目の『レイダース 失われたアーク〈聖櫃〉』のマリオン・レイブンウッドです。再登場は嬉しいですが、インディもマリオンもなかなかの歳なのでビジュアル的に・・・と思ってしまったのは私だけでしょうか?
やはり勝気な態度もそのままで帰ってきたことは嬉しい限りです。おかげで映画に活気が出ました。


ビジュアル的な問題はスパルコが解決してくれます。まさかのケイト・ブランシェットです。気づいた時は驚きました。髪形で随分と変わるものです。


スパルコと言えばソ連の軍人ですが、なぜクリスタル・スカルを探すのか。それはスターリンがその手のものにご執心だからです。
あれ?どこかで似たような話を聞いたことがあるぞ?
『レイダース』のヒトラーと同じです。おいおい(笑)

2016年6月12日日曜日

『エンド・オブ・キングダム』ネタバレなし

監督:ババク・ナジャフィ
主演:ジェラルド・バトラー
2016年公開


ホワイトハウスが襲撃された『エンド・オブ・ホワイトハウス』の続編です。
こっちもすごく面白かったです。



あらすじ

イギリス首相がひざの手術の合併症で死去。葬儀のために各国の首脳がロンドンに集まる。
40の国から40の警護班が来る上に、突然の事で準備もままならない。全力で警備を行うが、事件は起きた。

同時に各国の首脳が暗殺されたのだ。ドイツ、フランス、日本―そして合衆国大統領も狙われる。
なんとか逃れるも、追手は再び迫る。生き残ったマイク・バニングはひとりで大統領を守り抜けるか!


感想

息を吸って吐くかのように人が死んでいきます。敵も味方も。あまりにも死にすぎて命の重みについて逆に考えさせられました。


この映画は、ものすごく面白いです。マイクと大統領には、役職を超えた友情があります。それがよりエモーショナルな効果を生んでいたと思います。ほとんど殺し合ってたので目立ちませんが。


とにかく、一難去ってまた一難。敵は何度でも襲ってきます。それをひたすら撃退し続ける繰り返しが中盤まで続きます。これがスピーディかつ激しくて最高なんです。


一番の名シーンは、SAS隊員とマイクのワンショット長回しの銃撃戦です。流れるようなカメラワークで敵を次々と倒して前進します。
このシーンの爽快感たるや!絶対に見逃してはいけませんよ!!!

2016年6月11日土曜日

『マネーモンスター』ネタバレなし

監督:ジョディ・フォスター
主演:ジョージ・クルーニー
2016年公開

ジョディ・フォスター初監督作品のリアルタイム・サスペンスです。


あらすじ

「マネーモンスター」という財テクの人気番組がジャックされる。

事の発端はアイリスの株の暴落。アイリスはこれで8億円の損失を出した。原因は証券取引のアルゴリズムのバグと発表された。

「マネーモンスター」で司会者のリー・ゲイツは「アイリス株は買いだ」と言った。それを信じて大損したカイルという若者がスタジオに侵入。発砲し、リーに爆弾ベストを着せる。

なんとかカイルを落ち着かせようと指示通りに番組の放送を続けるかたわら、パティはアイリスの8億円損失の本当の原因を探り始める・・・


感想

ウォール街の闇、ジャーナリズムの本質、格差社会、そして事件を目撃する一般大衆。
それぞれが鋭く的確に描かれていました。

ウォール街の闇についてはネタバレ案件なのでスルーします。


ジャーナリズムの本質

そもそもニュースには大きく2種類あります。
ひとつは発表された事実をそのまま報道するもの。もうひとつは、自ら取材して得た事実を報道するもの。
今、ニュースではほとんどが前者です。しかし、例えば企業や政治家の不正を暴くことは人々にとって利益に繋がります。これがなければ、テレビなどのマスメディアはただの宣伝機関になり下がってしまいます。
にもかかわらず、年々取材や調査は減ってきているそうです。それが質の低下にも繋がっています。

『マネーモンスター』では、意に反して娯楽番組のスタッフが調査しまくって企業の闇に迫ります。
実際にこれをやったらいろいろまずいですが、スピード感もあり、まずい分スリルもあり、とても面白かったです。


大損してブチギレたカイルは、低所得者です。ここに格差社会という背景があるのですが、ネタバレスレスレなので黙ります。


一般大衆の行動

地味におもしろかったのは、この緊迫した事件を見守る一般大衆の行動です。

人の命がかかった事件も所詮は他人のこと。フラッシュモブとそう大差はないのです。野次馬は笑顔で集まり、視聴者はバラエティ番組の変わりにニュースを見る。
目の前で銃声がしない限り、事件はお祭りに他ならない。
事件が終われば日常生活に戻り、ネットではコラが拡散される。
そして事件は忘れ去られる。

ここまでをあくまで背景として描き切るところが凄かったです。さすが、ジョディ・フォスターは凄かった。

2016年6月10日金曜日

『スター・ウォーズ フォースの覚醒』レイはダークサイドのフォースを使ったのか〈ネタバレ注意〉



クライマックスのライトセーバーバトル。そこでカイロ・レンと戦うレイがダークサイドのフォースを使った説が存在します。

問題のシーンは、カイロ・レンがレイを追い詰めたシーンで
レン「フォースを学べ。俺がお前を導いてやる」
レイ「フォース?」
という会話の後、レイのフォースが覚醒し、一気に形勢逆転。レイがレンを倒します。


今回は様々な角度からこのシーンを検証しようと思います。できるだけ客観的に考えていこうと思います。


字幕から

まずは英語字幕から。英語字幕では、聴覚障害の方でも楽しめるように、効果音や叫び、息遣いまで表示されるものもあります。最近の映画にはほぼ付いているように思います。


上記のレイのセリフの字幕を抜粋します。


(SOFTLY) The Force?  訳:(優しく)フォース?

(BREATHING SLOWS)  訳:(ゆっくりとした呼吸)

(BREATHING CALMLY)  訳:(落ち着いた呼吸)


完全にライトサイドです。このあとのシーンからは感情に関する字幕はありませんでした。
字幕からは。レイはライトサイドという結論になります。



映像から

字幕関係なしに、表情や動きから検証します。

「フォースを学べ。俺がお前を導いてやる」

と言われたとき、レイは眉間にしわを寄せかなり力が入っていました。
しかし、

「フォース?」

といってからは、呼吸が穏やかになり、表情も穏やかになります。これはライトサイドです。


ところが、いざ戦いが再会すると、その動きはダース・ベイダーを追い詰めるルーク・スカイウォーカーを彷彿とさせます。
このときのルークと言えば、ベイダーの挑発にのってダークサイドの力を得て攻撃していました。

ということは、このときのレイはダークサイドだと言えるでしょう。

映像からは判断が付きません。


音楽から

『スター・ウォーズ』の音楽は、キャラクターごとにテーマ曲が作られています。だから音楽だけ聴けば誰の登場シーンなのかもわかってしまいます。

レイが
「フォース?」
と言ったとき、流れているのはフォースのテーマです。ダゴバで緑色の小さい奴の正体がヨーダだとわかるシーンや、アク・トゥーでレイがルークと対面するシーンなどで使われています。ルークのテーマと言ってもいいような曲でした。

この後、戦いが再会すると、レイのテーマに切り替わります。決着がつく直前に再びレイのテーマ。決着がつくとフォースのテーマが流れます。


レイはダークサイドかどうかを検証しているため、レイのテーマがどちらを意味するのかわかりませんが、フォースのテーマは”ライトサイド”のフォースのテーマです。

音楽から考えるとレイはライトサイドいえるでしょう。



小説から

最後に、講談社出版の公式ジュニアノベルズを参考にします。

まず、カイロ・レンが優勢の時の記述を見てみます。


 しかも、レイは怒っている。怒りがレイに力を与えていた。だが、同時にそれはレンの力の源でもあった。だから、怒りだけでは決してレンには勝てない。(P.185)


ダークサイドだと明記されているようなものです。
では、問題のシーンを見てみましょう。


「フォース?」レイはつぶやいた。その声には困惑といきどおりが入りまじっている。レイはしばらく目を閉じた。ふたたび目をあけると、これまで以上のすさまじさでレンに突進していった。レンは生まれてはじめて、戦う相手に自分より強い怒りを感じた。いや、レイを動かしているのは怒りではなく、レンがすでになくしてしまった別の感情かもしれない。(P.186)


 レンは思わずレイを見上げた。胸にはライトセーバーがつきつけられている。氷のように冷たいレイの視線にレンはふるえた。殺すのは好きでも、殺されるのはいやだ。カイロ・レンは恐怖を感じていた。(P.187)


最初から最後までダークサイドです。ただ、100%そうだとは言い切れません。なぜなら、怒り以外の何かがレイに力を与えていたからです。「レンがすでになくしてしまった別の感情」・・・ライトサイドと考えるのが妥当でしょう。

濁された!!!
どっちにしろ、怒りを使っていたことは確かなので、ダークサイドと言えるでしょう。



結論

ダークサイド:1
ライトサイド:2
判断付かず:1

ライトサイドが優勢でした。しかし、公式のノベルズが濁しているとはいえダークサイド寄りなのは無視できません。
判断の難しいところですが、このブログでの結論はレイはダークサイドのフォースを使ってはいないといえるということにします。

これが正解かどうかは、いずれ分かるでしょう。



参考文献
ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ『スター・ウォーズ フォースの覚醒』J・J・エイブラムス、2015年
講談社『スター・ウォーズ フォースの覚醒』マイケル・コッグ、2016年

2016年6月9日木曜日

『アイガー・サンクション』ネタバレなし



監督・主演:クリント・イーストウッド
1975年公開

ちょっと古めのスパイ・スリラーです。

あらすじ

元殺し屋のジョナサン・ヘムロックは美術の教授として教壇に立ちながら名画を収集していた。

あるとき、秘密組織C-2のボス”ドラゴン”から仕事の依頼をされる。スイスにいたスパイが何者かに暗殺され、生物兵器の情報が盗まれたのだ。
ヘムロックの任務は暗殺者2人に制裁(サンクション)を下すこと。

渋々引き受けたヘムロックは1人を始末するが、もう1人の正体が分からない。情報は、アイガーに登る登山隊のメンバーで足が悪いということだけ。
正体不明の暗殺者とともに、高難度の登山をしながら制裁を下すことができるのか!


感想

クリント・イーストウッド監督で音楽がジョン・ウィリアムズだから、期待して観ました。ところが、そこまでスリリングな訳でもないし、音楽も印象に残らない。正直なところ期待はずれでした。
まあ、古い映画だしイーストウッドも今より監督経験は浅いわけだから仕方ないといえばそうですが。
あ、決してつまらなかったわけじゃないですよ!


アイガーに登る前に、旧友を訪ねて訓練します。このシーンはやたら長いし、なぜか昔からの敵がオネエになってたり、何の脈絡もなくトレーナーの美女がおっぱい見せたりと謎が多いです。一体どういう意図があったのでしょうか?

それでも、クライマックスの登山シーンは良かったです。この中に犯人がいると分かっているが誰かわからない。暗殺者かもしれない相手の命を救ったり、命を救われたり。
そしてミスリードが上手かったです。
ここばかりはドキドキさせられました。

2016年6月8日水曜日

『スター・ウォーズ エピソードⅥ ジェダイの帰還』ネタバレあり



監督:リチャード・マーカンド
製作総指揮:ジョージ・ルーカス
主演:マーク・ハミル
1983年公開


『スター・ウォーズ』シリーズ3作目。旧三部作の完結編です。


あらすじ

『帝国の逆襲』から1年。帝国は第2デス・スターを建造し、完成は間近に迫っていた。前回の弱点を克服したこの超兵器が完成すれば、反乱同盟軍に勝ち目はない。そのようなとき、皇帝が自らデス・スターの視察に訪れる。

サラスト付近に集結した反乱同盟軍は、スパイから設計図と皇帝視察の情報を得る。この最後のチャンスに、皇帝もろとも帝国を滅ぼすべく総攻撃を仕掛ける。ジェダイの修業を終えたルーク・スカイウォーカーとともに・・・



感想

超久々に吹替えで観ました。おかげで「あれ?こんな声だったっけ?」となりまくってました(笑)

それはともかく、さすが三部作のラストだけあってスケールが大きいです。さらに今までの積み重ねもあり、ラストシーンは泣けます。大感動です。


今回思ったことは、新三部作やアニメ・シリーズを踏まえると、ダース・ベイダーが死ぬ時にめちゃくちゃ泣けるってことです。
タトゥイーンの奴隷だった子どもが成長して強いジェダイとなり、こっそり結婚し、弟子を育て、ダークサイドに堕ち、師と戦い、弟子と戦い、息子とも戦い、遂にライトサイドに帰還を果たし、その生涯を終える。
これらを全部観てきたわけです(アソーカとの戦いはまだ観てなかった)。

あれほど活躍したヒーローの死です。今なら焼けたベイダーのマスクを見るだけで泣く自信あります。


シリーズ通して、宇宙での戦闘の満足度は今作が一番ではないでしょうか。
敵機の位置を知らせる声、助けを求める叫び、救われたお礼。これらがひたすら繰り返されるドックファイトが好きなんですが、エンドアの戦いにはちゃんとあります。
さらに戦艦同士の撃ち合いもわずかながらあります。

宇宙での戦闘と言えば、『シスの復讐』冒頭のコルサントの戦いも凄いです。CGで描かれているため、より派手になっています。見応えとしてはこちらのほうがあるかもしれませんが、ドックファイトはほんの少しだけです。
すぐにバズドロイドと遊び始めてしまうため、そこまで楽しめません。かわいいから結構好きなシーンですが。
ここでは『ジェダイの帰還』で消化不良だった戦艦同士のゼロ距離射撃を存分に楽しめます。

一長一短なところもありますが、『ジェダイの帰還』のほうが好きかな。

最新作『フォースの覚醒』のドックファイトはスピード感はピカイチでしたが、パイロット同士のコミュニケーションが足りなかったと思います。「敵が来たぞ!」「対空砲火に注意」くらいじゃないか?

2016年6月6日月曜日

『22ジャンプストリート』ネタバレなし



監督:フィル・ロード&クリストファー・ミラー
主演:ジョナ・ヒル、チャニング・テイタム


『21ジャンプストリート』の続編です!


あらすじ

頭脳明晰のシュミット(そういう設定だけど明晰なところを見たことはない)、筋肉バカのジェンコ(こっちはそのまま)が帰ってきた!

今度の任務は大学にはびこるドラッグ「WHYPHY(ワイファイ)」の元締めを見つけること。なんというネーミング・・・。


ジェンコはアメフト部で活躍し夢中になる一方で、ジェンコは女子大生と恋愛。それでもわずかな手掛かりをもとに潜入捜査を開始する。



感想

ギャグもアクションも製作費も前回よりも大幅にパワーアップしてます。

ストーリーの大筋は前作と割と同じ。それをネタにしまくっているのが面白い。ただし、大学での役割は前作と逆です。ジェンコが派手で、シュミットが地味。


ギャグの数が大幅に増えているように思いました。こっちのほうが好みでした。
製作費の事や監督の事をうまいことネタにしてたり、人種差別配慮ネタも良かった。


エンドクレジット後のおまけ映像の破壊力が凄まじかったです。数秒の映像で腹筋を破壊されました。

これはマジで面白かったからオススメです。

2016年6月4日土曜日

『許されざる者』ネタバレなし



監督・主演:クリント・イーストウッド
公開:1992年

「最後の西部劇」という異名を持つ映画だそうです。


あらすじ

19世紀末のワイオミング。ビッグ・ウイスキーという町の酒場で、男が娼婦の顔を切りつける事件が発生した。男とその相棒は酒場の店主スキニーに取り押さえられ、保安官のリトル・ビル・ダゲットに突き出される。ダゲットはスキニーに馬7頭を差し出すことを命じた。
しかし、娼婦たちの怒りはそれでは収まらず、みんなで貯めたお金を出し合って男ふたりに賞金を懸ける。


かつて、列車強盗などでその名を轟かせたカウボーイがいた。しかし、そのウィリアム・マニーも結婚し、父になり、妻と死別し、今はふたりの子どもと牧場を細々とやっていた。酒も殺しもきっぱりやめ、良い父親だった。
ところが、豚が次々と病気になってしまい生活に困っていたところ、スコフィールド・キッドと名乗るカウボーイの若者が現れる。彼は娼婦を切り刻んだ男を殺し賞金をもらうつもりだ。その相棒にマニーを選んだわけだ。
一度は断るも、気が変わったマニーは、かつての相棒で射撃の名手ネッド・ローガンを連れてキッドを追いかける。



感想

派手にドンパチすることはあまりなく、落ち着いたトーンで進行します。始まった瞬間「あ、イーストウッドっぽい」と思いました。

殺しをやめたふたりの老カウボーイと経験の浅い若者の3人組が、ふたりの賞金首を殺すことで命の重みを痛感する。そんな映画です。

カウボーイ、娼婦、保安官がそれぞれの形で死と向き合います。そして、死が軽いものではなく、人のすべて奪う、未来さえも奪う重大なことであるの悟るのです。それを知っていたはずのマニーとネッドも改めて痛感します。

そして、殺しをしたものは誰であれ、決して許されない。



これは少しネタバレになる話です。
ネッドが殺されたいきさつを聞きながら、マニーは止めていた酒をグビグビ飲み始めます。妻と子ども達を愛する父親が、女子どもも容赦なく殺す悪名高きアウトローに戻った瞬間をうまく表現しています。
このシーンはちょっとぞくっとしました。

2016年6月3日金曜日

『スター・ウォーズ エピソードⅤ 帝国の逆襲』ヨーダの警告〈ネタバレ注意〉



監督:アーヴィン・カーシュナー
主演:マーク・ハミル


人生を変えた1本を久しぶりに観ました。
初めて観たスター・ウォーズがこの帝国の逆襲でした。そして、そのときにも思った疑問をちょうど10年間未解決にしていたことに気がつきました。

と、その前にあらすじを。あらすじはいつもの通りネタバレなしですが、その後はネタバレありです。
まあ、半年前に映画史に残るネタバレ厳禁案件をダイジェストでさらっとネタバレする番組が量産されてましたから、今さら気にしてもしょうがないような気もしますが。


あらすじ

3年前に反乱軍がデス・スターを破壊し歴史的な初勝利を収めたが、帝国打倒に至らず。今や帝国に脅威とみなされ、追撃の手は以前と比べ物にならないほど強まった。
そして、反乱軍は秘密基地を氷の惑星ホスに建設した。

基地周辺をパトロールしていたルークは途中、獰猛なワンパに襲われてしまう。食べられる前になんとか脱出するが、外はホスの動物すら耐えられない寒さ。やがて力尽きて倒れてしまう。
意識を失う直前、師であるベン・ケノービの霊体が現れ「惑星ダゴバに行き、ジェダイ・マスター・ヨーダの教えを請え」と伝える。

ハン・ソロになんとか助けられたルークだが、ほっとするのもつかの間。帝国に基地が見つかってしまった。

戦っても勝ち目はない。反乱軍は決死の脱出作戦を決行する。



ヨーダの警告

本題です。
10年前に感じた疑問。それは、ハンとレイアが窮地に陥った未来を見たルークが、修業半ばで助けに行こうとしたときのヨーダのセリフです。

「今行けば友だちを助けられるかもしれん。だが、彼らがそのために戦っているものを失うだろう

この意味が分かりませんでした。
反乱軍が戦う理由は、銀河に自由と正義を取り戻すことです。当然レイアもそのために戦っています。ハンは密輸人でいろいろありますが、志は同じはずです。


クラウド・シティでの戦いの結末は、ルークはベイダーの手を逃れ、レイアたちも脱出に成功します。ハンだけがカーボナイト凍結され、ボバ・フェットの手でジャバ・ザ・ハットのもとへ届けられました。

失ったもの=ハン・ソロ

ということになります。
では、ハン・ソロとは何者でしょう。
銀河に自由と正義をもたらす者ではないことは確かです。どちらかと言えば銀河を自由に飛び回ってトラブルと借金を巻き起こすほうです。
レイアとの恋もありますが、レイアは恋愛のために戦っている訳ではありません。

結論、ハン・ソロは答えにはなりえません。


では、何でしょう。周りが盛り上がって騒いでいる飲み会の席でひとり沈思黙考しました。

ルークがダゴバを発つ前、ベンとヨーダが警告します。決して暗黒面に身をゆだねるな、と。彼らが恐れていたのは、新たなる希望であるルークを失うことです。
このとき、まだクラウド・シティで起きることは誰にもわからない未来のことです。

結果を先に見たことが間違いでした。クワイ=ガンの言うとおり、今に目を向けなくては。


ルーク・スカイウォーカーの果たす役割

失うもの=ルークと仮定して考えてみましょう。
ルークがクラウド・シティに行って起こりうる未来を考えます。

ベイダーと対決すれば、未熟なルークに勝ち目はありません。結果はふたつにひとつ。暗黒面に転落するか、死か。

もし、ルークが暗黒面に取り込まれれば・・・
ハンはボバに連れて行かれるかもしれませんが、クラウド・シティからレイアたちは脱出できるでしょう。ルークは皇帝のもとで修業を積みます。シスにはダース・ベインが作った掟があります。ルール・オブ・トゥー。シスは常にふたりでなければならない。そこでベイダーとルークが対決し、おそらくルークが勝つでしょう(ふたりで皇帝を殺すかも)。
エンドアの戦いでは反乱軍の地上部隊とルーク率いる帝国軍が激突。シスを相手に弓矢で戦うイウォークと少数の反乱軍兵士では歯が立ちません。シールドは消えず、アクバー提督率いる反乱軍の艦隊も全滅、あるいは総退却。第2デス・スターが完成し、反乱軍は歴史の1ページになる。
さようなら、フォースの覚醒。

もし、ルークが死ねば・・・
エンドアでベイダーと小熊ちゃんたちが対決。以下同文。


以上の通り、銀河から自由と正義が失われます。
ヨーダが警告したのは、ルークの敗北により反乱軍の全滅し、銀河から自由が永遠に失われることだったのです。


しかし、実際は違いましたね。ルークがベイダーと対決するも、うまく逃げおおせた未来は『ジェダイの帰還』で観ることができます。
では最後に、ルークがダゴバから出なかった未来を考えてみましょう。


もし、ルークがダゴバで修業を続けたら・・・
ハンたちはランドの助けで無事に脱出。修業を終えたルークはヨーダかオビ=ワンの口から父について知るでしょう。
そして、エンドアで最後の戦いです。

でも、クラウド・シティでは、ルークがベイダーをひきつけ、ボバはハンを手に入れてさっさと飛び去ったからこそ、怖ろしく射撃が下手なストームトルーパーを相手にするだけで脱出できました。
もし、ベイダーとボバがぴったりくっついていたら・・・

2016年6月1日水曜日

『デッドプール』ちょっとネタバレあり



監督:T・J・ミラー
主演:ライアン・レイノルズ


あらすじ

元特殊部隊のウェイド・ウィルソンは、バーで娼婦のヴァネッサと出会い、交際する。しかし、幸せもつかの間。末期のクソ肺がんだと申告される。

そのようなとき、スーツ姿の男がバーを訪れ、ウェイドにある話を持ちかける。なんとガンを治せるというのだ。そして、スーパーヒーローになれる、と。
一度は断るが、ヴァネッサのために男の話に乗る。

しかし、ウェイドに施されたのは、ミュータント遺伝子を活性化させるクソ血清を投与する人体実験だった。
実験は成功。ウェイドのガンは完治し、不死身の体になる。しかし、副作用で醜い姿となってしまった。

ウェイドは元の姿に戻してもらいヴァネッサと再会すべく、施設の所長エイジャックスを追い、ここにデッドプールが誕生する!



感想

ギャグの嵐だが、根本にあるヴァネッサとウェイドのラブストーリーがしっかりしているため、安定した仕上がりになっています。
最近のヒーロー映画は長く続くシリーズものだったり、壮大な物語の一部だったりと、設定が複雑化しています。でも、この『デッドプール』は違います。X-MENのキャラクターでありながら単体の映画として独立しており、気軽に楽しめます。しかも超おもしろい。

アクションも一級品です。『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』とかと同じくらいのハイレベルだと思います。
悪役のフランシスはあんまりパッとしませんが、どんな傷でも治せるデップーと全く痛みを感じないフランシスという対比がなかなか良いです。

デップー、コロッサス、ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドのトリオも素晴らしい。
ひたすら正義で紳士のコロッサスとそれを笑い飛ばし反抗するデップー。それを見て笑っているネガソニック。次回作でも彼らの活躍を観たいものです。

第四の壁を超える演出は、観客に向かって話すコメディの役割と、ナレーションの代わりという役割を持っていました。そのおかげで、笑いながらも自然と物語に入り込めました。
そもそもネタの入れ方が上手です。無理やりねじ込んだ感が無いので素直に笑えます。


公開まで長い長い道のりだった『デッドプール』。低予算ながらここまでおもしろいものを作り上げ、R指定映画の歴史を変えたライアン・レイノルズは本当に凄いと思います。『デッドプール』には彼の愛と執念の賜物です。あっぱれ!